クレディスイス COCO債 AT1債

クレディ・スイスの買収に伴い、スイスの金融当局が発表した内容によって、「AT1債」と呼ばれる特殊な社債が実に2兆円以上が一瞬にして無価値になる異例の事態が起きました。この社債は、金利が高い一方で、自己資本が減少した際には、元本が削減されたり、強制的に株式に転換されたりするリスクがあり、預金者に影響が出ないように設計されていました。今回のケースでは、「AT1債」が無価値になるトリガーが2つあり、スイス当局が銀行が破綻のおそれがあるとみなした場合、または例外的な政府支援を行った場合に無価値となる仕組みになっていました。スイス政府がUBSに政府保証を行ったため、2つ目のトリガーに該当し、「AT1債」が無価値とされたとみられています。この問題は、世界中の金融関係者に衝撃を与えています。

無価値となったベースとなる知識をわかりやすく以下にまとめております。
参考レポート(https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202212/202212e.pdf
バーゼル規制についての入門書です。金融危機を受けて、自己資本比率規制が導入され、自己資本の質の向上が図られました。このファイルでは、CET1比率が4.5%に引き上げられたことや、Tier1やTier2の定義が見直されたことなどが説明されています。AT1債やバーゼルIII適格Tier2債についても詳しく解説されています。

バーゼル規制とは、国際的な銀行監督のための枠組みであり、銀行が適切な資本を保有し、リスクを管理することを求めるものです。バーゼル規制は、金融危機を受けて改訂され、自己資本比率規制が導入されました。この規制により、銀行は自己資本比率を一定以上維持することが求められます。

CET1比率とは、銀行の最も強力な資本であるCET1(Common Equity Tier 1)の割合を示す指標です。CET1は、株式に近い概念であり、損失吸収力が高いため、銀行の安定性を高めるために重要な役割を果たします。バーゼルIII以降、国際統一基準行に対しては、資本保全バッファーも加え、CET1比率が7%(=4.5%+2.5%)になることが求められています。これは、金融危機を受けて自己資本比率規制が導入されたことにより、銀行の安定性を高めるために必要だったからです。

AT1債は、Additional Tier 1債と呼ばれ、バーゼルIII規制においてTier1資本の一部として認められた債券です。AT1債は、破綻時に自己資本の一部として扱われることがあり、また、特定の条件下で利息支払いが停止されることがあります。これにより、銀行の安定性を高めることができます。 一方、バーゼルIII適格Tier2債は、バーゼルIII規制においてTier2資本の一部として認められた債券です。BIIIT2債(Basel III適格Tier 2債)とも呼ばれます。BIIIT2債は、破綻時に自己資本の一部として扱われることがありますが、AT1債ほど強力な損失吸収力を持ちません。また、新しい条件が加わっており、それまで発行されていたTier2債からその性格が大きく変化しています。 これらの債券は、銀行などの金融機関が自己資本比率規制を満たすために発行することがあります。ただし、債券をイメージした説明を行いましたが、AT1債やBIIIT2債については、ローンなどの形式もとりうる点に注意する必要があります。


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